34年間仕事場としてきた農家の納屋を出て、いよいよ事務所を新しく建てなければならなくなったとき、「どんな建物を建てるか楽しみだ」と期待を寄せてくださった恩師と「ワシが出なおさまらんだろ」と集まってくれた気概ある職人さんたちの存在が、施主と建築家の二役を担う私の背中を強く押した。奇しくも明治の五重塔の保存修理を任されていたさなか。慣れ親しんだ木構造の必然の美と性能に改めて触れ、感動したことで、「木造貫構法による柱が主役となる空間」が生まれた。主役の柱は柱頭を貫で繋ぎ、柱脚を基礎外部と大引きで固定して自立させている。柱を繋ぐ貫は外部まで突き出すことにより深い軒を支える。南面はすべて開放し、昼間は自然光を取り込み、夕暮れには室内から洩れるあかりと大屋根にバウンドさせた玄関アプローチのあかりが来訪者を招き入れる。
所在地 |
香川県丸亀市 |
施工主 |
多田善昭建築設計事務所 |
施 工 |
株式会社 富田工務店 |
敷地面積 |
495.99㎡ |
延床面積 |
138.24㎡ |
竣 工 |
2017年2月 |
備 考 |
撮影:淺川敏 掲載:新建築 2017.11 ヤマダの木構造(建築知識の本) 2017.05 宮地電機㈱HP 「インタビュー僕らの仕事」 |